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劇場版「空の境界」

劇場版「空の境界」Blu-ray Disc BOX

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Fate/zero』があまりにも退屈で、全編通して駄作という烙印を押したわけだけど、その反動で、TYPE-MOON作品に触れたくなり、『Fate/stay night』をプレイしたり、今さら『空の境界』の劇場版を通して見たりした。

空の境界』の原作は未読なので、あくまで映画版について書きたいと思うのだが、これを見て『Fate/zero』と同じufotable制作であることを考えると、ufotableアニメ会社としてレベルが低いわけでは決してなく、『Fate/zero』がひどかったのは一重に虚淵くんが関わってしまったせいだと結論付けた。

どこかでエロゲシナリオライターのランク付けをしていたのを見かけたが、そこで奈須きのこはSランク、だーまえはAランク、虚淵だけ欄外で「ステマ」になっていた。ステマというのは特別賞みたいなものかな(笑)?

< 劇場版 空の境界 >

詳しい各章の内容はwikiが詳しい。
< 空の境界 - Wikipedia >

さて『空の境界』を見て思ったのだが、奈須氏の作風の根底にあるのは、正統な「ボーイ・ミーツ・ガール」だ。
その意味でも『空の境界』は傑作に値する。しかし、この劇場版は原作ファンからすると賛否両論あるようで、必ずしも評価されているばかりではないことも確認した。

言ってしまえば、原作つきの作品は得てして先に見たほうを人は評価する。例えばマンガ原作のアニメの場合、原作のマンガを既読の場合はマンガのほうを、アニメから見たらアニメも評価する、といった風に。例外はあるかもしれないが、大概そうだ。
で、あるから『空の境界』の劇場版に批判的なのは、やはり原作既読者で、アニメから入った人には好意的な評価を得ている印象を受けた。
それに原作未読派の自分でも、『空の境界』劇場版は十分に楽しめたし面白かった。

第1章から順を追って感想を書きたい。

第1章「俯瞰風景」は監督が『Fate/zero』のあおきえいだったが、可もなく不可もなく無難な出来だった。ただし、1章の割には設定の説明不足があり、キャラの背景が描かれていない分、初めて見る人にはやや不親切にも感じた。これは後から説明されると思ったので、その点は差し引いても、出だしとしては良作ではないかと思われた。

第2章の「殺人考察(前)」は野中卓也監督。式と黒桐の高校時代の出会いを描いた作品。式のぼっちぶりが素晴らしい(笑)。彼女の言う殺人衝動がどうなっていくのか、未決のまま次の章にいってしまうわけだが、これも後に説明されるとして特にマイナスではなかった。つくりも無難で安心して見れた。しかし、黒桐はいい奴だなあ。

第3章の「痛覚残留」は小船井充監督。
これは面白かった。第2章を経て、キャラの説明がされてきたので、式というキャラがどういう少女であるかも分かってきたところでの、こうした分かりやすい事件。そして、終盤の緊迫した戦闘シーンは実によかった。

第4章の「伽藍の洞」は滝口禎一監督で、式が「直視の魔眼」を手に入れたいきさつが描かれている。1章で説明不足だった部分はこの章で補填された感じ。

第5章の「矛盾螺旋」は平尾隆之という監督で、自分はこの章が一番面白かった。
原作ファンからすると実験的で邪魔なシーンが多く、心理描写がカットされているので不評なようだが、そもそも心理描写をアニメでだらだらやることほどの無駄はないわけで、これくらいばっさりとしていた方がいいし、原作を知らない初見者の自分でも十分に楽しめた。
反復するイメージや時間経過の実験的映像がミステリアスな本編とうまく融合していると感じた。説明不足な点は確かにあるかもしれないが、本筋は分かるのでその辺は目を瞑れるだろう。

第6章の「忘却録音」は三浦貴博監督。これは普通かな。ストーリーが他の章に比べてほのぼのしている感じもあったせいか、一番アニメらしいアニメと言うか、劇場版というよりテレビアニメの内容に近い感じだった。

第7章の「殺人考察(後)」は瀧沢進介監督で、第5章の「矛盾螺旋」と並んで素晴らしくよかった。
一連の連続殺人の犯人が式であることを信じなかった黒桐が、式とほぼ同時に犯人を突き止め、そこで式に「犯人を殺すな」と約束させる。

(以下ネタバレ)
しかし、戦闘のさなか、式のストーカー=犯人=白純が黒桐を殺したと告白したため、逆上した式は白純を手にかけてしまう。
そこで式が黒桐との約束を反芻するわけだが、殺人を犯したことで自分は向こう側の人間になってしまった、黒桐と約束したのに、自分は黒桐の側のこちら側の人間でいたかったのに、でももう無理だ、と回想するシーンが実に泣ける。
最後は式と黒桐の昼メロ的展開なわけだが、2人の心がクロスし、思いやるモノローグは本当によかった。

最終章にあたる「終章/空の境界」は見ていないので、感想は書けません。

劇場版だけの感想だが、劇場版が原作に則しているのであれば、奈須きのこ氏が命の重さや殺人という禁忌の重さ、それだけで物語を紡ぎだせる力量のある作家であることが十分に分かる。
しかし、その逆にいて殺人を肯定し無意味にぼりぼりキャラを殺すような虚淵に何故「zero」を書かせたのか、理解に苦しむところだが、要は「友達は選ぼう」ということです。

全編とおして、世界観にどっぷりとはまれて、これを見ている間は他のアニメを見る気がおきなかったくらい良作だった。
脇役キャラである橙子さんもよいし、「痛覚残留」の藤乃もいいキャラだったと思う。

何より式がかっこいい。常にストイックでクールな彼女が、たまに照れたりするところがまたかわいい。あと黒桐は「特徴のないところが特徴」のようなキャラだが、確固たる倫理観と人を思いやる強い気持ちを持ち合わせていて、ヒーロー的立ち位置にふさわしいキャラだった。

以前、今作の評判が悪いらしいとufotableの悪口を書いてしまったが、やはり自分の目で確かめてからでなくては、感想は書いてはいけないな、と改めて思いなおしたりした。

Seventh Heaven

Seventh Heaven

最後に音楽についてだが、劇場版は各章ごと主題歌が違い、全章をkalafinaが歌っている。もちろん音楽は梶浦由記
どの曲もよくて、アルバムを買ってしまった。こちらもあわせてお勧めしたい。