このページを読む者に永遠の呪いあれ

スマフォからコメントを書き込む場合、一度PCモードで表示してください

コメントを書きこむ前に、こちらの記事に必ず目を通してください 「処刑宣告

最強のメイド小説/スティーブ・エリクソン『Xのアーチ』

Xのアーチ

Xのアーチ

は、スティーブ・エリクソンの「Xのアーチ」です。

エリクソンという人は、アメリカ文学の中でピンチョンとか、ジョン・バースと同じに位置する、そういうカテゴライズ自体いいことではありませんが、いわゆるアッパー系作家で、世界観的にはラテンアメリカ文学の「マジック・リアリズム」に影響を受けています。

簡単に言うと、「時空を(軽々と)超える」。

この「Xのアーチ」も類に漏れずそういうお話です。アメリカ合衆国の創始者であるトマス・ジェファソンとその愛人の黒人メイドだったサリーとの「許されざる愛」を描いた輪廻転生ものと言えばいいのか。
この2人が時を超えて転生し、トマス・ジェファソンは世界中のあらゆる場所でサリーが転生している姿を探し続ける…というお話。しかし、2人が前世を思い出したり、しないうちに引き裂かれて、また転生…といった話だった気がする…。

大分前に読んだので、かなりの大筋を忘れているのですが、邂逅シーン、別れのシーンなどで荘厳な魔法(?)が起こって場面の切り替わりがあるわけですが、それらがいちいちダイナミックで、美しかったのを妙に覚えています。

で、トマス・ジェファソンの執着ぶりが、非常にドラマティックに描かれ、対するサリーは神秘的・偶像的に美しく描かれています。
転生するたびに前世の因縁から逃げてしまうサリーに、トマス・ジェファソンは時空を超えて(!)ひたすら追い掛け回す。ちょっとストーカーちっくです。

「時代を超え、場所を越えて男を狂わせる最強のメイドもの小説」というわけで「Xのアーチ」をあげておこう。
ちなみにラストシーンはえらい感動させられます。



<複>マヌエル・プイグこのページを読む者に永遠の呪いあれ(ラテンアメリカ文学選集 1)」★★★
*1

*1:<コメント転載>
Posted by sutarin 2004年09月04日 02:43
後日、「うさこ」が教えてくれた先によると、トマス・ジェファソンとメイドだったサリーの話は実話だったようです。
何でも、7人も子供がいたらしい。(リンク先に詳細)
エリクソンのフィクションだと思い込んでいただけに、ショックだったなあ。
手塚治虫の「アドルフに告ぐ」はヒトラーユダヤ人だったら…という話でしたが、それが実話だった時に誰もが驚くに、匹敵する衝撃と言えば分かりやすいでしょうか。
遅かれながら、思いだしたのでトラバさせていただきます。

Posted by nano 2004年09月04日 03:03
TBありがとうございまっす^^。
ご紹介の最強の「メイド小説」は読んだことないのですが、サリーはファーストレディみたいなものだし最強の「メイド」なのかもですね。

合衆国内ではメイドというか奴隷という位置付けらしいのですが、奴隷制度の無いフランスにはわざわざメイドとして連れていってるあたり、男を狂わせるという要素は現実のサリーにも十分あったんじゃないかと思います。

Posted by sutarin 2004年09月05日 02:05
コメントとトラバ、ありがとうございます。
トマス・ジェファソンはサリーをメイド(奴隷)にしときたかったから、奴隷制を廃止しなかったのかも、ですね。
だとしたらすごい話ですが。

エリクソンの小説ではそういう風に説得づけていた気がします。サリーはそんなジェファソンの独占欲が嫌で、対等にありたいと願い続けて叶わず、という話だったと思います。だけど、まさか実話だったとわ…。