読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

このページを読む者に永遠の呪いあれ

スマフォからコメントを書き込む場合、一度PCモードで表示してください

コメントを書きこむ前に、こちらの記事に必ず目を通してください 「処刑宣告

箱男/安部公房

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

安部公房のなかでも特に有名な作品。安部公房は結構読んでいるのだけれど、何故かこれは読んでいなかった。


内容はぶっちゃけものすごい実験小説である。
要するにダンボールを頭からかぶった男が主人公なのだけれど、セクションごとに語り手・主人公が変わる。


最初は<Aの場合>と名づけられ、箱男を見かけた会社員が自分も箱男になってしまう話。


主なストーリーは、箱男である主人公の前に一人の看護婦が現れ、5万円でその箱を譲って欲しいと持ちかけられ、金を受け取った主人公はその看護婦のいる病院に行き、そこで自分とそっくり同じの箱男になった医者と看護婦の裸を目撃する。そして箱男になった医者は看護婦を好きなように扱ってもいいと告げられる。


しかしながら、本作はすすむにつれて、複雑な構造を帯びてくる。
これに関しては文庫版の平岡篤頼の解説に詳しい。

記述の面から言うと、記述者である箱男が作中人物と化することによって、作中人物として行動していた贋箱男が記述者(供述書の筆者)となる。医者であるこの男は、箱男として偽者であるが故に医者としても贋医者となってほんもののの医者、軍医殿の登場を促し、今度は逆に軍医殿がほんものの医者であるが故に、ほんもののの箱男となり、したがって記述者の地位をも贋箱男=贋医者から奪い返して<死刑執行人に罪はない>の筆者となる。
<略>
最初の箱男がふたたび記述者となって「そろそろ、真相を明かすべき時が来た」などと書くが、それも軍医殿が贋医者によって殺されることによって作中人物と化し、記述者として失格するからである。
<略>
「見る」ことが「見られる」ことを呼び、「ほんもの」が「贋もの」を誘発する。しかも相互の役割はたえず交換されるから、どちらのほうが優位と決めることもできない。

そして小説の最後に一見無関係なような<Dの場合>という少年の挿話がある。手製のアングルスコープで隣家の女教師のトイレを覗こうとするが逆に発見され、鍵穴から覗く女教師の見ている前で全裸になり、射精してしまう。


要するにこれは相互逆転の小説なのである。登場人物たちが逆転するように小説の構造もまた逆転をし、また逆転をし、を繰り返すのである。


一口に説明するにはなかなか難しい作品だが、そこがまた安部公房らしいとも言える。


ちなみにおいらが一番好きな安部公房作品は『方舟さくら丸』。これはもう本当に荒唐無稽なギャグみたいな小説で徹頭徹尾面白い。

方舟さくら丸 (新潮文庫)

方舟さくら丸 (新潮文庫)


次には『カンガルーノート』。内容は忘れてしまったのだが、とても面白かったと記憶している。

カンガルー・ノート (新潮文庫)

カンガルー・ノート (新潮文庫)


この2作品に比べると『箱男』は非常に難解かつ実験性に富んだ作品だった。



<複>『箱男安部公房 ★★★1/2