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反=日本語論/蓮實重彦

反=日本語論 (ちくま文庫)

反=日本語論 (ちくま文庫)

読み終えるまでにかなり時間がかかってしまった。
理由は2個下の記事の通り。


で、この本。蓮實の著作の中ではものすごく読みやすいのではないか。
あのうざったい衒学的な文体も、普段の著作とは比べ物にならないくらいなりを潜め、比較的読みやすく平易な文体で、内容も理解しやすいことが書かれている。


が、よってこれは通常の批評・評論と違っていて、エッセイの部類に入るものにもなっている。


内容はフランス語と日本語を使う蓮實が日常で感じた家族とのやり取りの中の、比較文化考察・言語学論といったものである。


だからといって日本がいかに特殊か異質か、といったことを殊更強調しているわけでもなく、いや、強調したいのがぷんぷん漂っているのだけれど、そこは蓮實お得意の曖昧にぼかすやり方で書かれているので、その主張がまったくうざったく感じられないのだ。


そういうわけで今まで読んだ蓮實の著作の中では刺激が少ないというか、薄っぺらい印象を受けてしまうのも否めない。


でも、蓮實という批評家・文学者を知りたい人にとっては入りやすい一冊ではあると思う。だからといって、この本に書かれている彼の姿が真の蓮實重彦だと思われてはまた困るのだけれど。
蓮實は本来、刺激的で挑発的で煽動的で先駆的な批評家だったのだ。


過去形なのは今はひよって見る影もないからなわけだけど。



<複>『反=日本語論』蓮實重彦 ★★★