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ブラッドハーレーの馬車/沙村広明

ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS)

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沙村広明の本はこれで2冊目。他に読んでいるのは『おひっこし』だけ。
『おひっこし』は端的に言ってつまらなかった。この人、美大出身でしょう。確か多摩美。オイラも美大出身者で、『おひっこし』に描かれている日常が、あまりに身近すぎて、というか、まさにああいった感じで大学生活送ってたもんだから、よく言えばリアル、悪く言えば珍しくもなんともなくて、結論、面白くなかった。ギャグやコメディーが下手というか、あの絵柄にあってなくね? という感想しか抱けなかった。

本書に手を出したのはAmazonのカスタマーレビューが侃々諤々だったから。
で、読んでみた。確かに残酷な話だけど、それほど騒ぐほどのものじゃない。率直な感想を言えば1話1話がコンパクトに巧みにまとめられていて、画力、構成力ともに連作短編集としては出色の出来だとまず思った。

舞台設定はリアルの欠けらもない。刑務所で少女が大勢の男に輪姦されるって、エロ漫画にあるような設定。胃之上奇嘉郎の初期作品ってこんなんばっかだったような。描写力で言えば胃之上のが上回っているし、話は変わるけど、太平洋戦争中、日本軍は実際にこーゆーことしていたわけで。今、水木しげるの自伝を読んでいるけど、やっぱり従軍慰安婦のことがでてくるし、慰安婦の施設の跡地を長野で見たことがある。慰安婦になった少女達は12歳からいたそうだ。

ただし、『ブラッドハーレー〜』は、そうした啓蒙的な主題は一切背負ってない。少女達が傷ついてぼろぼろになっていく肉体損傷の描き方は、作者の嗜虐趣味を感じる。
以前に、このブログでクライスト*1を評した時、沙村広明がクライスト原作で漫画描けば絶対に面白くなるだろう的なことを書いたけど、クライストの狂気を沙村広明なら冷静に理解して漫画に再現できる気がしたからなんだけど、沙村の女性の描き方ってのは、好意的というよりも、悪意に満ちている気がする。で、こういう作者ってのは大概ホモの場合が多い。で、唐突だけど、沙村ホモ説を唱えてみたりするわけだ。

で、その沙村のサディスティック性だけど、以前にやっぱりマゾッホの評の時に書いた山本直樹*2と比べてどうかっていうと、山本のほうが上回っている。
何故かって言うと、山本のサディスト嗜好は、人間そのものに対するサディズムであり、読んだ者を不愉快にする。だけど、沙村のサディズムは、胃之上的なエロ漫画家に多少文学性を取り込んだ、というか毛が生えた程度でしかない。
その意味において、この作者はサディスト的な振る舞いをするだけで、実際にやりたかったことはコンパクトに纏まった(救いのない)連作短編、だったのではなかろうか。

ところで、ブラッドハーレーってタイトルだけど、BLOOD+ハーレー(ダビッドソン)なんだろうか…