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室町お伽草紙―青春!信長・謙信・信玄卍ともえ/山田風太郎

随分前に読んで感想を書かないままになっていたので、今さら書きます…本当、いつ読んだのかさえ見事に忘れていますが。

室町お伽草紙―青春!信長・謙信・信玄卍ともえ (新潮文庫)

室町お伽草紙―青春!信長・謙信・信玄卍ともえ (新潮文庫)

さて、山田風太郎の本は初めて読みました。
友達が大ファンで、くノ一の話ばっかりしているので、そんなに面白いのかい、と一冊読んでみた次第。
ところが適当かつ、いい加減にセレクトしたのに、恐ろしいほど面白かった。歴史ものが嫌いで苦手だった自分をすっかり忘れてしまうほどに。

最近のラノベしか読んでいないヘタレ読者はともかく、ラノベをしっている人なら、風太郎の名前は知っていると思うし読んでいるかもしれません。
風太郎は今でいうところのラノベ作家であり、しかしながら、文体といい、ストーリーといい、小説として遜色がない、というか下手な作家よりめちゃくちゃうまい。
最近の若手ラノベ作家に失望している人や、食傷気味な人は、是非読むべきだと思います。
これがラノベの水準になったら、本当に素晴らしいジャンルだと思います。

ストーリーはタイトルにも有るとおり、信長・謙信・信玄が登場する戦国時代が舞台。主人公は後の秀吉となる日吉丸。
簡単なあらすじは以下の通り。
日吉丸は足利将軍家の姫君であり、絶世の美少女・香具耶の従者になり、姫を護る塚原卜伝上泉伊勢守と一緒に旅に出ますが、道中で信長・謙信・信玄に出会い、帰りに大阪は堺に立ち寄り、信玄の父・無人斎から、香具耶を憎む玉藻より、姫の身柄を拘束した将軍に南蛮銃三百挺を与えるという話を持ちかけられる。
しかし、信長・謙信は香具耶に「ほの字」のため、香具耶を敵・玉藻から守るために攻防します。
玉藻VS戦国武将、プラス日吉丸たちの対決が始まる…

まさに「戦国オールスターキャストでお贈りする奇想天外・痛快無比の傑作長編伝奇小説」でした。

それと、香具耶というキャラがかわいくて賢くて武芸に長ける−−いわゆる今でいう「萌え」キャラとして機能しています。というか、山田風太郎は「萌え」という概念がない頃から、つぼを心得ていたのですね。

日吉丸が塚原卜伝から譲り受けた狐の子が、ちょうど使い魔的な役割を果たしており、主人公の危機が迫ると「アッカーーーーン」と啼いて教えてくれるんですが、これがまたかわいい。
それと、敵キャラとして登場する玉藻も怪しい魅力を秘めた絶世の美女という設定で、香具耶と対照的に配置されています。玉藻は香具耶の身代わりとして自分の操を失ったことから、香具耶を憎んでいるのですが。
そして、彼女はでっかい妖孤の使い魔を従えていて、玉藻が襲われそうになったりするときや、攻撃を仕掛ける時に「マラタトゥ!」って言うんだ。(笑)「まら、立つ」
そーすっと、その場にいた男どものアレが総勃起する、異常なほどのボッキンなもんだから、イテテテテーってなって、全員その場に呻く。要するに無敵。
であるから、超現象・超能力バトルになっている。しかし、技を使えるのは玉藻だけで基本は戦術。

で、そんな美女の間を戦国武将どもが右往左往するわけで、中でも若き織田信長がいいキャラです。
主人公の日吉丸も、女の子には晩生なのにとても強く、しかし不器用な信長に次第にひかれていく。で、日吉丸は信長の意思をつぐ、のちの豊臣秀吉になる…と。
上杉謙信は女性への免疫がないため、香具耶が好きなのに、好きすぎて失神してばっかいる。しまいには香具耶に不審がられる、報われないキャラです。カワイソス。
武田信玄は、かなり悪党に描かれていますが、弱点が「芋虫」。なので、しょちゅう芋虫で撃退されまくる(笑)。
しかし、みな、それぞれ強くて、けんかしながらも香具耶を守ることで団結していく。
そして、どのキャラも個性的で魅力的で、風太郎がどれだけキャラクターを上手に作れるか分かると思う。まさに娯楽文学の鑑たるキャラクター小説。
ラノベ作家志望者は風太郎をめざすべきです。

で、最後の大阪・堺でのたたかいの場面は街中が舞台となり、迫力もあって圧巻です。
ラストはネタバレになるのでこれ以上は秘密ということで。

しかし、この本も600ページ近くあったんだけどそれを忘れるくらい、まったく長さを感じさせず面白かったです。
ハルヒ』とか『いぬかみっ!』とかそんなのばっかりしか読めない野郎は、きょうび、風太郎でも読んどけ、って気分になった。余計なお世話だろうが。



<初>山田風太郎『室町お伽草紙―青春!信長・謙信・信玄卍ともえ』(文庫)★★★★