何やら、お上がうるさいようで…
- 作者: 野坂昭如
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1970/04/17
- メディア: 文庫
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エロゲー業界を取り締まろう! 的な動きがあったようで。
こういったことに関しては、戦後はいつの時代も漫画・アニメ表現に対して規制の動きがつきまとったわけですが。それは21世紀になっても消えない、ということなわけです。
こういうの見るたびに思うのは、今や漫画・アニメ・ゲームといったコンテンツ産業が市場的価値において、名実ともに天下をとったんだなあ、ということ。
昔だったら、ターゲットは小説だった。「チャタレイ裁判」とか「四畳半襖の下張り」裁判があった。今のエロ産業とは比べものにならないくらい、猥褻度は低いにも拘らず敗訴した。
ということは、いかに小説の社会的影響力が大きかったか、ということであり。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2003/08/20
- メディア: DVD
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今、エロゲーが槍玉にあげられているのは、コンテンツ産業が社会的に影響力を持ちえた証拠で、同時にお上にケツを追い回される運命になったと。
で、小説市場がライトノベルやミステリーを除いて衰退傾向になった今、お上は何をしても見向きもしません。それがいい証拠に芥川賞作家の平野啓一郎君がエロ・フェラ小説を堂々と文芸誌に発表できるご時世になってしまったわけですよ。…ガクゥ_| ̄|○
- 作者: 平野啓一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/03/28
- メディア: 単行本
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ですから、お上に追っかけられないようにするには、業界全体の商業的衰退しかないのです。そうすれば見向きもしなくなる。でも、人気があるうちはお上が追い回してくるのだ。まるでトムとジェリーのいたちごっこのように。
つっても、とにかくも漫画家やクリエイターの利権意識を高めることは必要になってきていると思います。出版社にとっても、漫画家にとっても。
職業的意識を高めるというか、権利自覚するというか、お飯食えなくなっちゃうー意識を高めて、「エロですみません」的な後ろめたい思いを抱かずに、「こっちはプロのエロ事師ですが」的な態度で、権利主張する、そうしないとやっていけなくなる気がするのです。
そういう意味において、「アリスソフト」さんの会社紹介にある文章は、感動的であるし、信頼もおけるし、応援したくなります。
当社は、アダルトゲームメーカーです。もちろんその他の部分をないがしろにするつもりはありませんが、アダルトゲームであるという事を大事に考え、またそれを作る事に誇りを持っています。
- 作者: 野坂昭如
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1982/02
- メディア: 文庫
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自分は「エロ事師たち」(「火垂るの墓」)の作家・野坂昭如先生を尊敬して止まないのですが、「四畳半」裁判の時に出した本で、かなり的確なことを言っていて、要約すると、
「エロってのは“プロ”にしかできない仕事で、長々とした濡れ場を飽きずに見せ、さらに扇情を催させるには、並大抵じゃない努力と、修練と技術が必要で、非常に難しいことなのだ。そういった職人気質な仕事を見て、猥褻だ、何だ決め付けて、じゃあ、お前書いてみるか、と言われたって絶対にできっこない」。
引用すると、
字に書かれたり、絵として表現されたものに、猥褻の定義を当てはめることは、土台、無理なのだ、それが文学、美学上の名品として認められているにしろ、また、市井の無頼漢が、金ほしさにでっち上げた作品であるにしろ、まさしく千差万別の個人の、性意識とからみあって、一つの感銘を生ずる、その感銘は個人に属するものであって、これを取り締まることは誰にもできない。たとえば、『東京母の会』とかいう、往年『愛国婦人会』のリーダーだった老女の率いる、妙な集団がある。何かと言うとしゃしゃり出て、女の裸を描いた絵、あるいは写真を目にすると、びっくり仰天したふりを装い、桜田門に御注進に及ぶ。
すると、取り締まる側は、羞恥嫌悪の条項を適用し、厳重注意の程、申し渡すらしいが、その権威にかけても、こういった輩は相手にしない方がいい。何度もいうようだけれど、『東京母の会』の存在そのものが猥褻なのである、母と名乗れば、いかなる横車も押し通せると信じこんでいる姿ほど、羞恥嫌悪をもよおさしめるものはないのだ。
<略>
性というものを、そう軽々しく扱っていると、必ずしっぺ返しを食う、世間の普通人は、いわゆる猥褻文書や図画を目にすると、たちまち餓狼の如くに、性的犯罪へおもむくと考えているなら、大きな間違いだ、現代が直面している性の問題は、さらに深刻であって、人間が人間らしさを保つために、性はどれほどの力を持つものなのか、どこの国でも思い悩んでいる、ポルノ映画の一部をカミソリで削り落とし、不自然にキラつかせて、ことなれり、と考えるなど、無邪気というよりは、あまりに人間を知らなさ過ぎる」(『四畳半色の濡衣』より)
エロって人の嗜好によりますので、「これはいいけど、これは認めん」、「ロリはいいけど、ショタは駄目」とかそういうのもひとまず置いといて、エロコンテンツ産業が好きなもの同士、手を取り合うしかないんじゃないか。
産業の衰退は自然の流れなので、この先はあるかもしれませんし、そうなれば、こういった流れも自然と止まるように思われますが、天下のうちは続くと思うので。