隣の家の少女/ジャックケッチャム
- 作者: ジャックケッチャム,Jack Ketchum,金子浩
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1998/07
- メディア: 文庫
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映画化で知った本です。初ケッチャムでした。
実話が元になっているそうですが目を覆いたくなるほどひどい事件です。
アメリカは本当にこういう陰惨な事件が多いなあ。
最初に断っておくと、これはアメリカの「大衆文学」です。さくさく読めるし、気をてらった文章もなく即物描写が主体で、感想としてはやっぱり大衆文学だと思いました。
ストーリーはいたって単純です。主人公(私)の少年の隣家に引き取られた孤児の姉妹の14歳の姉が、養母から虐待を受け、死に至るという話です。
どんな悲惨な目にあおうとも、人生とは過ぎてしまえばこれも運命だったのか、と受け入れられることがほとんどであるのに対し、虐待死事件を聞くたびに、被害者にとっては神などこの世に存在しなかったと思いながら死んでいったのだろうと思わされます。
この小説の実際の事件の犠牲者は、まさにそういった人生だったわけです。
Amazonのカスタマーレビューを見る限り、「読まなければよかった」「後味が悪い」という喧々諤々の本作ですが、自分はわりと冷静に読めました。
主人公の少年は彼女が殺される可能性が出てきた時になって初めて、彼女を庇い、最後は虐待の張本人である養母を事故と見せかけて殺害するので、救いがまったくないかというとそういうわけではないと自分は思いました。
しかして、その虐待の内容が、殴る蹴るの暴行やレイプは当然のこと、素っ裸にして天井からつるしたり、熱した針で「I Fuck.Fuck me」と腹に刻ませ、性器にコーラの瓶を突っ込んだり、女性器を焼いたりします。
その辺の虐待描写が克明に描かれているかといえば、答えはノーで、あっさりとしたものです。
読んでいる最中は落ち込みますが、本から目を離せばすぐにもとの生活に戻れる程度の読後感でした。オイラからすれば、もっと打ちのめされる本は、これ以外にもいっぱい読んでいる記憶があります。
確かにこの小説は残虐ですが、Amazonのレビュアーで「発禁にすべきだ」といった過激な意見についてはいただけないと思っています。
どんなものであれ、表現の自由は守られなくてはならないわけで、例えば数年前に女子高生コンクリート詰め殺人事件の映画上映反対運動がありましたが、おいらはああいった運動に参加する人の気がまったく知れません。なぜ、事件を隠蔽しようとするのか、理解できません。実際に起こった事件なのですよ。被害者にとっては紛れもなくそれが現実だったわけです。
さらに言うと、そういった運動を起こすことによって、逆に事件をいたずらに煽り立てていること、喧伝してしまっていることにどうして気がつかないのか。
コンクリ事件については、事件を隠蔽したいのか知らせたいのか不明な、単にマニアじゃないのかと思われるような、偏執的に固執する一部の人たちがいるわけで、気持ち悪いとしか思えません。
それでは採点。
『隣の家の少女』ジャックケッチャム ★★★