太陽 The sun/ソクーロフ
※大分前に見たままエントリーするのを忘れていたレビュー。
<太陽光発電の価格,費用,補助金など!太陽光発電なう>
間違いなく今年公開された映画で5本の指に入る傑作だろう。
ところが、日共のアカパタが山田和夫と連動して、ネガティヴキャンペーンを展開中。
毎度のことなので、スルーするに限る。
四方田犬彦や山根貞男といった信用できる評論家が絶賛しているので、お墨付きに傑作映画の太鼓判を押します。
感想については町山智浩氏とほぼ同意。
<ソクーロフが昭和天皇を描いた映画『太陽』をDVDで観る - 映画評論家町山智浩アメリカ日記>
というか町山氏が紙上ロードショーのごとく映画について詳細に書いていて、描写も的を得ているので、これ以上書くべきことは何もない。(ちなみに『世界』掲載の四方田犬彦の文章もよいです)
ソクーロフについては昔からのファンで、『太陽』で5本目。多作な監督なので、5本じゃあファンとも呼びがたいけれど。
当時のシネフィル仲間とよく「優等生のタルコフスキー」と「不良のソクーロフ」といった風に議論していた青臭い時期があった。
言ってしまえば、タルコフスキーがクラシックならソクーロフはロックのような感じ。
当時のオイラは、タルコフスキー好きだったが(タルコフスキーは寡作なので、全部見ている)、周りにはソクーロフが人気があった。
その頃はあまりソクーロフのよさが理解できなかったりした。というのも、ソクーロフの初期作品(しか入手できなかった)は、今よりずいぶんアングラ色が強く、極端に人を選ぶ作風だった。
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その頃に見てよかったと思えたのはドストエフスキーの『罪と罰』を題材にした『静かなる一頁』とストルガツキ兄弟の『世界終末十億年前』(タイトルだけでめろめろです)を映画化した『日陽はしづかに醗酵し…』かなあ。
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ストルガツキ兄弟はタルコフスキーにも『ストーカー』を映画化されていて、これについては不満をぶちまけていたけど、ソクーロフの映画については「僕らの小説に相応しい映像だ」と絶賛していた。
で、ソクーロフの映画を見る機会がないまま、数年の時を経て、久しぶりに見たけど、いや〜驚いた。何が驚いたって、普遍的というか一般性を獲得していたから。
これはもう万人に理解できる映画になっているし、初期にあった無駄な長回しも一切なく、というよりカット数が増えたし、展開も分かりやすくなっていた。
まさに巨匠と呼ぶにふさわしい風格だ。
それよりもアメリカ映画にありがちな「勘違いニッポン」の図も一切なく、違和感のない「日本」を再現できていることも驚きに値する。
というか、単館系映画でヒットし同時期にネットでは話題騒然だった『時をかける少女』だけど、同じ単館系ヒットなら『太陽』も上映館を拡大しているし公開期間も延びているので、もっと話題になっていいはず。というか、ネットってやっぱオタクの巣窟なんだなあ、じゃなくて、「はてな」ってオタクの巣窟なのだなあ。
『太陽』に描かれたイッセー尾形演じる天皇陛下は愛すべき天皇陛下の姿だった。だけど、ソクーロフは天皇の戦争責任はなかったこととし、すべてを美化する免罪符のような映画には決してしていないし、「天皇が救世主のような描かれ方をしている」といった意見も見たけど、何か別のフィルター入っているって感じだ。
むしろ、この映画は孤独な天皇の姿に実にリアリティーがあった。
天皇が人間宣言をし、自由になれたと思えたが、天皇制の維持によって、「特別な人」のまま自由になれなかった現実があって、そのせいか、この映画は叙情的になっているとも思ったし。