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バトル・ロワイアル

バトル・ロワイアル 上  幻冬舎文庫 た 18-1

バトル・ロワイアル 上 幻冬舎文庫 た 18-1

バトル・ロワイアル 下   幻冬舎文庫 た 18-2

バトル・ロワイアル 下 幻冬舎文庫 た 18-2

映画はずいぶん前に見たけど、小説で読んだのは実はこれがはじめてです。この本がバカ売れしている頃、オタ友が総転びしていて、その影響で友達も読んだらしいけど、7時間で読破してしまったらしい。
7時間て。ゲームかっつの!…友達に言わせるとやめられないとまらなかったそうで売れることに納得していた。

オイラはさすがに7時間では読めず、ちびりちびりと読み進めてやっとこ読了いたしました。つか、先に映画を見ていたので、ストーリーを知っていたし、結末も知っていたし、先に知っていると知らないとでは読むスピードにかなりの差が出るのではないか、と思った。

書くまでもなく、この小説は高見広春の処女作にあたるわけだが、デビュー時、すでに筆者がそれほど若くなかったことを考えても、処女作でこの内容と技術力に構成力。総合的に見ても、稀に見るスーパースター、超新星なのは間違いない。プロの作家と比較しても見劣りせず、桁外れである。

冒頭の「前口上」から、テクニックを感じさせる。文章も流暢で、達者でよどみがない。1300枚という規定枚数を大幅に超えてたとしても、これを最終選考までもっていた編集者は見る目があるが、最後の最後で落選させた審査委員たちは一堂にお粗末だといわざるを得ない。
当時は内容云々で問題にされたが、売れるであろうことは素人目から見ても明らかだし、金の卵、ドル箱を手放したことは大いに後悔すべきだ。オイラだったら、落選しても出版させたし、その意味で普段は役にたたなそうな本ばっか出してる太田出版はなかなかだと思う。版権もらって、一財産築いちゃったわけで、やったもん勝ちです。
さらにいえば、監督の才能はともかくとしても、原作に目をつけて深作に撮らせた息子の健太もさすがだ。

あらすじは触れるまでもなく、あまりに有名なので割愛する。描写について言えば上手だけど、気になる部分が何箇所かあった。
例えば「怪訝に思う」「訝る」の表現で、「眉をあげる」つーのを多用しすぎている。この表現自体、小説として頻出用語ではない気がするし、しっくりともしていないので気になった。辻仁成も「口を真一文字にする」っつー表現を多用していて、失笑した覚えがあるけど、細かいことだが、こういう部分って大事だと思うので。

あと、殺人シーンや残虐シーンでみられた視点の書き方(?)も相容れなかった部分がいくつか。しかし、後半に従ってでてこなくなったので、気にならなくなったけど。
例えば、前半にあったこんな描写とか。

いや、と思い直した。神様がなんだってんだ、この際? 安野先生は熱心なクリスチャンだったが、神様を信じていたおかげで坂持金発に強姦されました、めでたしめでたし。

高見広春バトル・ロワイアル』より

さいごの一言がどう考えてもいらん、つーか、挑発的なんだよな。
自嘲的でもあり、場に対して不謹慎というか。…うーん、おそらく自主ツッコミに近い何かなのだと思われるが、緊張したシーンが台無しになっている気がする。要はあれです、芸人が自分でつっこんでいるノリに近いと言うか。
この2点さえなければ、もっとよかったのにと思った。

バトル・ロワイアル 特別篇 [DVD]

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登場人物については、いかんともしがたく映画版と比較してしまった。結論、映画のがぜんぜんよかった。
原作では七原は凡庸すぎる主人公で、なんでこいつがこんなにモテ男なわけ? っつー感想を抱いてしまったが、映画は藤原竜也みたいな不思議くんというかな、カリスマ役者が演じていたから、妙な説得力があって気にならなかったし。
しかし、藤原竜也は女顔すぎていかん(笑)。おかげでヒロインの前田亜季の存在が薄くなっていて、山本太郎と並ぶと藤原竜也のほうが似合うのはいかがなものか。(笑)

桐山も原作はオールバック…安藤政信演じる「一切セリフがない」桐山のがぜんぜんよかった。シリアルキラーな設定が十分に生かされていた気がする。千草貴子も栗山千明のイメージがはまっていたし。それに、原作の千草貴子→新井田和志の殺害シーンは生理的に受け付けられない。キモス。最悪だ。おえーー。
こちらも映画のほうがあっさりと殺していてよかったかなあ。あと、原作のほうが当然ながら登場人物は多いし、一人一人、死に様が描写されているけど、原稿の経済性の問題になるけど、重要じゃない雑魚キャラは映画くらい割愛してもよかったのではないかなと思った。

制服も、原作では学ランにセーラーで女子もおさげで、「戦後の中学生」なイメージだし。ここも、映画版のBA-TSUのブレザーは最高によかったと思う。ペチコートがいかったなあ。
あと、先生。原作では金八先生のパロディー(これについて荒俣宏がいちゃもんつけてたけど)、映画はたけし演じる「北野」というオリジナルキャラだったが、これも映画のがよかった。原作ではあまりにうすっぺらな印象で漫画的だったし。

総合的に見ても、小説にあった抜け落ちた部分をあますことなく補強し、『バトロワ』という世界を見事に完成させたのが、映画版『バトル・ロワイアル 特別編』だったんだなあ、ってことです。
オイラは断然映画派で、むちゃくちゃ好きなので結局こういう結論になってしまったが。アクション映画としても傑作だし、どんな役者も仕込めば使えることを証明してたし、2時間以上、一度もだれることなく緊張感をもたせ、切れのいいアクションを連続で見せてくれた映画は、今まで見てきたどの映画にもなかった気がする。
山本太郎の川田は本当にいい味でてたしな。メロリンQを見直した。

映画は娯楽大作という一点集中で成功していたけれども、『バトロワ』の最たるメッセージを読み取るなら、やっぱ原作を読むべきではある。幻冬舎文庫版で読んだけど、本人によるあとがきが載っていて、そこでも言っているけど、要するにこの小説は日本批判のために書かれ、作者が一番憤慨しているのは、管理社会なのです。本文でもそのものズバリなセリフがありますし。

川田は頷いた。「そう。つまり、今この国がやっているようなシステムが、この国の人間に、結構ぴったりあっていたんじゃないかとな。つまり、お上の言うことには逆らわないこと。付和雷同。他者依存性と集団思考。保守性と事なかれ主義。みんなのためだからとか誰かに立派そうな理由を示されたら、たとえ密告をするときでも、いいことをした、と自分を納得させられるような救いがたい愚鈍−−。そんなこんなさ。要するに、誇りもなけりゃ倫理もないってことになるか。自分のアタマで考えられないんだよ。長いものにはくるくるくる。全く、ゲロの出る話だ」


高見広春バトル・ロワイアル』より

小説の舞台は「大東亜共和国」という架空の軍事国家だけれど、徹底された管理・監視社会が行き届いている。
最近の共謀罪とか聞くと、不穏ながら、バトロワの世界が現実味を帯びてくるはず。
そうでなくても、十分すぎるほど現行の日本は監視社会だし、異端を排除するという日本社会の体質は昔から変わっていないと思う。だから、やっぱり「大東亜共和国」は日本にしか見えないし、国会議員がギャースカ騒いだのも42人殺しという内容の過激さも然り、内容的には日本の監視社会批判で国家反乱分子がヒーローになっていくっつー過程も嫌だったんじゃないかな。あれらのバトロワに関する一連のニュースは、旧ソビエトのSF作家たちが軒並み弾圧されたことが、ついに日本でも起きましたが、みたいな時代錯誤を感じずにはおれなかった。
だからって、作品に託されたメッセージこそが絶対至上という気もないので、これはこれ、ということで。

あと、映画版でも原作でも思ったことだけど、辺鄙な田舎の中学生という設定の割に相当ませてます。というか、最近の中学生はみんなこうなんでしょうか、へーとかほーと思うエピソードが多くて、いっそ高校生にしたほうが自然だった気が…。中学生であることにこだわる理由がイマイチ見つけられないまま終わったし。
つか、オイラ自身が辺鄙な田舎の学生だったけど、色恋沙汰は誰もが純情だったし、つきあったからって即効やったりしなかったし、仲良く下校する程度がデフォルトだったわけだが。援交女子なんて、ないないありえなす! とか言ってみる。そうゆこと勘案しても、多少、無理ありすぎなエピソードがいくつかあるなあと思ったがいかがなものか。つか、中坊にしては恋愛感が大人びていないか…。

【岐阜】中津川DQNジャンボリー 中2殺害事件まとめ
http://osaka.onigiri.name/nakatsugawa/

だって、これが厨房の恋愛事情でっせ。「ゎたしは大好きだょvv」とか、リア厨語丸出しの文章見ると、異常にむかむかする。書いてる厨がバカっつーより、厨にバカにされている気がするからか。
飼い主がよくペットに幼児語で話しかけるが、あれと同じことされた気がするんだよな。

あと、高見広春自身があとがきでも書いているけど、「ジーザス!」とかさー…アメリカ崇拝志向? つーか、オイラにはまったく共有できないセンスだった。ださいお。


<初>高見広春バトル・ロワイヤル』<上><下>(文庫)★★★1/2