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このページを読む者に永遠の呪いあれ

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コメントを書きこむ前に、こちらの記事に必ず目を通してください 「処刑宣告

第134回芥川賞

アンチ松尾>という前回のエントリーにありましたとおり、公約その1を守りまして、芥川賞の選評を読みました。
で、思わず『文藝春秋』買ってしまいました。
そもそもオイラが芥川賞発表の『文藝春秋』を毎回立ち読みするのは河野多恵子(と今は外れたけど古井由吉)のファンだからという動機があるだけです。しかし、今回の河野多恵子の選評には正直びっくりした。
ここ数年ずっと彼女の選評だけに注目してきたけど、異例というか異常なほどに、あの、河野先生が! 今期受賞作を大絶賛しているんですねー。一箇所も難癖がない。松浦寿輝町田康を引用までしてボコったのに! 舞城王太郎阿部和重は「読まなかったことにしよう」で片付けてしまったあのお方が! これは! 異常事態です!
(いや、そーでもない…河野多恵子の好き嫌いは手に取るように分かるので、彼らの選評にはいずれも想定内といった印象を持ちました)

あまりの異常事態に、絲山秋子を読みたくなって買ってしまいました。
最初の1、2行で「ああ、これは河野多恵子が誉めるわけだ」と思いました。何故って絲山秋子は読んだことないけど、文章に衒いがない。これは河野多恵子が好きそうな文体です。
ところが、発売直後にどこぞのブログで

頭の奥で音が聞こえるほどに、ぷちっと切れた。思わず売り物を投げつけそうになりました。それが表現だというのか。しゃっくりを表現したかっただと!?じゃあなんだ、←これもしゃっくりだというのか!よしんば、その作品ではしゃっくりだとしよう。ならば最初の会話文でかましやがれ・・・!中途半端に冒頭で説明してんじゃねーよっ!!
http://border-sky.seesaa.net/article/13232968.html

なんて書いている人がいました。この方は同人作家のようですが、読んでもいないのにこういうことを書くことを「難癖」って言うんですのよ。にっこり。

こういう人に限って、河野多恵子なんて一作も読んでないだろうし、それで選者に難癖つけるわけです。

中途半端に小奇麗に整って歪な作為を読ませられるくらいなら、泥臭くて青々しくて衝動的な作品の方が、絶対にいいと思った。同じように鼻をつまみたくなるような異臭を放っているとしても・・・。

こういうことを言っている以上は、河野多恵子を読んでも多分1mmも理解できないだろうし、しようとも思わないのだろうが。そんな読者に選者の悪口をいう資格はないと思います。

で、松尾スズキに関しては蓋をあけたら、ほとんどの選者がスルーしていて、わずかに黒井千次宮本輝が言及している程度。そもそもこの2作家は作家としてもあれなもので、意見なんてどうでもいいんで、宮本輝が誉めてても、「あ、そう」程度で、全然どうでもよい。
しかし、当初ニュースで流れていた池澤夏樹は完無視状態で、あの報道はなんだったんだと一瞬思わせられた。

選考委員の池沢夏樹氏は「松尾さんの作品が話題だということはよく分かっていました」と前置き。「読んだ人の7〜8割が納得するが、危ない橋を渡ってほしい気持ちもある」など受賞作以外では同作について最も言及していた。

松尾スズキ、芥川賞を逃す

というか、池澤夏樹からすれば、これは痛烈な嫌味というか完璧な批判ですね。想定内だったけど。
上の記事をもっと噛み砕いて、解説すれば恐らくこういうことになる。
「読んだ人の7〜8割が(彼の作風の破天荒さに)納得するが、(僕は納得しない。彼の作風は一見、破天荒だが、実は作品の世界観はすべて想定の範囲内。真の意味で危ない小説とは、時に現実と僕の存在を脅かす。しかし、彼の作品は既存作品にある"破天荒"の域を出ることはない。)危ない橋を渡ってほしい(というのは、こういう小説を書くのであれば、既存の枠組に収まった小説ではなく、そこを超越した小説を目指して欲しいという)気持ちもある(がまだまだですね。にっこり)」

当然、というか予想通り、河野先生は一言も触れていませんでした。どっとはらい

*1

*1:コメント転載

# 森のくまさん 『ウロウロしており、こちらを発見させていただきました。
初めまして。森のくまさんと申します。
えーっと、とても言い出しにくいことなのですが、引用されてるブログを書いた者です。
いやもう、本当にびっくりしました。
あらためて自分のブログが世間に公開されているのだなと、実感いたしました。
細々とやってるブログなのに発見していただけて嬉しかったです。
ありがとうございます(^^)
欲を言えばTBしてほしかったですが・・・いやいや、欲は出してはいけませんね。

・・・で(っていうのも変なのですが/笑)
この話、後日談がありまして。
読んでもいないのに物を言ってはアンフェアだと思い立ち、絲山秋子さんの他の作品を読んでみました。
「海の仙人」という作品です。
結論からいうと、とても読みやすくてコミカルで深くて面白かったです。
(だから逆になぜあれをしゃっくりにしたのかという疑問は深まったのですが;・・・・・・まぁ、それはいいとして。)
絲山秋子さんの文章のよさを知ることができてよかったと思っています。

句読点や記号については自分なりのポリシーがあったので、言ってしまったことです。
それで不快な思いをさせてしまったら、本当に申し訳ございません。
もとは私も記号を多用して文章を書いていたのですが、ある時「記号のなんたるか」がわからなくなり、いっそ排除したところから必要なものをかき集めて書いてみようと思い、それから記号潔癖症になってしまいました。
自分でももっとうまく記号を使わなければいけないと思うのですが、どうもなかなか使い切れないのが現状です。

ただ、作品の良さも悪さも読む人次第だと思います。
私にとってはとても強烈な出会いになってしまいましたが、それがきっかけで普段読まない作家さんの本を読む機会が出来て、結果的にとても満足しています。
上手く表現しにくいのですが、全ても絶対も何もないのが、小説のいいところだと思っています。
書き手がどんなに崇高な真っ当な姿勢で書いたとしても読み手に伝わらないことはざらだし、そもそも伝えようとするものではなく、いつの間にか伝わってしまうものだし・・・・・・そんな世界では正しさも真実も無意味に思います。
・・・・・・っと、余談が過ぎました。

では、突然現れて、しかも長々と失礼いたしました。
不適切だと思われた場合は、管理人さまのご判断により削除してください。

追伸。
「同人作家」という言葉をどのような意味で使われているのか、ちょっと気になります。
アマ全般ということですか?
よろしかったら、教えてください。

では、今度こそ退散いたします〜。』 (2006/03/18 21:50)

# sutarin 『コメントありがとうございます。いやはや、見つかってしまいましたか。一応、運営ポリシーとして、いい意味で引用していない場合はTBを送らない主義にしています。(逆の意味でも基本的にはしない主義ではありますが)
リンクもためらったのは、いわゆる「儀礼的無関心」という趣旨でしておりません。見つかることはないと思っていたのですが、不愉快にさせたようでしたら、件については謝罪いたします。
絲山秋子氏の受賞作ですが、自分もあの後に読みまして、結論から言えば、「決して傑作とは言いがたいが、昨今の新人においては異例なほど素直な作家」という印象を受けました。もっと言えば、自分の思ったことを背伸びせず等身大で書いており、この姿勢だけでも高く評価に値すると思いました。その素直さ純朴さは文体からも漂っていますし、ストーリー自体も全く気を衒ったところが驚くほど「ない」のです。
故に作風は地味に落ち着いてしまっている印象はありますが、「虚勢を張ることしか能のない新人作家」ばかりの昨今を思えば、それさえも稀有な存在であることを認めざるを得ません。
河野多恵子山田詠美池澤夏樹が誉めたのは、そうした文学に対する姿勢であり、真摯な態度と作家性であったと思います。世界観も非常に透明で、「謎」がない。これにも好感を持ちました。
この一作だけではこれ以上の評価をすることは難しいのですが、のちのち化けていく作家ではないかな、と思います。

>句読点や記号については自分なりのポリシーがあったので、言ってしまったことです。
それで不快な思いをさせてしまったら、本当に申し訳ございません。

別に不愉快になりはしませんが「読んでいないこと」でおっしゃっていたので引用したのが大きな理由です。ただ、記号を多用した素晴らしい小説はいくらでもあります。例えば、このブログのタイトルに使用しているセリーヌとか、本当に素晴らしいです。
それと、自分が「中途半端に小奇麗に整って歪な作為を読ませられるくらいなら、泥臭くて青々しくて衝動的な作品」といった小説が全て嫌いなわけではなく、書くこと全てに責任を取れるか取れないかが表出しているか否かによります。日本の作家は概ね、無責任にそうした世界を書き散らしている印象を受けることが多いのです。
セリーヌはフランスの作家ですが、その意味では「鼻をつまみたくなるような異臭を放っている」小説として世界一の傑作作家だと思います。

最後に「同人作家」という呼称ですが、「創作活動をし作品をサイトに掲載している」管理人さま全般について、そう呼ばせていただいており、アマという意味ではありません。自分は文芸・オタク同人ともに活動をしていた(後者は現在進行形。現役バリバリのオタク同人作家ですが)ので、創作をしていれば「作家」として認識します。「プロ」として一般に広く認知されていない作家は「同人作家」と呼ばせていただくことが多いのです。 (2006/03/19 04:30)』