電話男
- 作者: 小林恭二
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2000/06
- メディア: 文庫
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電車男に関しては、まとめサイトでお腹イパーイになった。つーか、あれが実話であろうが、作り話であろうが真偽はどうでもいいくらい、単純に読み物としてど〜よ? としかならなかった。そうした感想しかもてなかった。ズバリ、つまらなかった。
アキバくんが一目ぼれして驚くほどうまくいく
それだけの話だった。つーか、そうとしか訳せない。くだらない。これがつまらなくて何と言う。障害がない。予定調和すぎる。展開が全部読める。1行目から読める。
ご都合主義もここまで来ると、呆れて口が塞がらない。
何が悲しくて日夜苦労して、あるいは苦労せずとも作り話を少しでも面白くしようと努力している作家や漫画家やそうしたフィクションの作り手たちが、苦渋の涙を流しそうな話だった。
これが実話だとして、だったらなんだろう? もっと面白い実話は世の中にはたくさんある。実話であろうとなかろうと、「面白くない」ことは最大の罪だ。
掲示板というアイデアがいいという人もいるが、それは物語の一要素としてしか機能していない。つーか、装置としても「聴衆=野次馬=オーディエンス」の群れでしかない。物語そのものは電車男の独我論で綴られ、独りよがりの域を脱していない。つーか、こいつは最初から人の意見なんて聞いていないし、また影響も受けていないよなぁ?
いや、別にオイラがオタだからとかそういう理由は関係ない。世間一般がオタのことを罵倒しようと誉めようと、オイラは何も気にしない。そういう理由をぶっこ抜きにして、読み物としてつまらなかっただけです。
まとめサイトの最後ページまでいって「マジでぇ? マジでぇ? これで終わりじゃないよなあ?? 嘘だろぉ!おいっ!」となって必死にサイトをぐるぐる循環したオイラの徒労を返してくれ。
つーか、文学新人賞に応募されるど素人の応募作のほうがマシではなかろうか、と思われるくらいつまらなかった。中の人、新潮社含めて、お前ら読者をなめてるのか? という気にさせられ、これが社会的現象を起こさせるくらいにヒットした時点で、末期だ、、と思った。
まあ、これに感動した多くの人は、普段は本なんて一冊も読まない人たちなんだろうな、と結論付けることにした。
で、電車男のあまりのつまらなさの反動で今さごろ小林恭二の『電話男』を読んでしまった。つーか、最初に電車男と聞いたとき、「小林恭二のファンなのか?」と本気で思ってしまった。
でも、面白さでいえば『電話男』の方がやや上か、くらいの出来だった。そんなわけで『電話男』でも思いっきり負け組なオイラだった。
『電話男』のあらすじ等々は話すのもかったるいというか、大したことないと言うか、本人は力んでがんばって書いているのだろうけど、書かれた時代(80年代)に取り残された印象が強く、今読むと驚くほど新鮮さがない。それがいかんともしがたい、って感じでした。
かいつまんで言うと、この日本に「電話男」という存在がおり、社会的にも世間的にも広く認知されている。彼らは何者なのかと言うと、単に電話をとって相手の話を聞いてあげるだけ。いわば、相談コールみたいな人たち。で、彼ら電話男にまつわるエピソードを一人の電話男が物語るという、それだけの内容。
電話男は宗教団体に迫害されたり、相談者に逆恨みされて殺されたり、ひどい目にも遭うが、電話男の中にはどうやって電話男になっていったか、といった感動話も盛り込まれている。しかし、それだけの小説でもある。
同時収録の『迷宮生活』も過渡期と言うか、やりたいことはわかった…で終わってしまった観が否めない。非常に残念でした。
もう少し小説への構えに余裕があるといいのだが…偉い高尚なことをしているという意識が若干鼻についた。
不愉快ではなかったので星2つで。
つーか、小林恭二って今も作家生活しているのかな。この人は『海燕』出身者だけど、『海燕』って有名な作家が出ているんだよねえ。吉本ばななとか、島田とか。福武書店が文芸誌はもうからないという理由から廃刊してしまったけど、当時を知っている人から聞くといい雑誌だったという噂です。
<初>小林恭二『電話男』(文庫)★★