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コメントを書きこむ前に、こちらの記事に必ず目を通してください 「処刑宣告

コンクリート大好き

赤瀬川源平先生が、「日本の河川は四万十川をのぞいて一つ残らず護岸工事がされている」と昔に言ってました。つまりこれは、どの川もコンクリート工事がなされている、という意味なのですが、日本がいかに世界に類を見ない公共事業大国か、という証明でも有ります。


それだけでなく、牛と熊しか通らない道にもコンクリートを敷き詰めてしまうコンクリートに対する日本人の偏愛ぶりは、公共事業とか、そういうの通り越して、「コンクリートが大好き」なんだなと感心するしかありません。


一体何が言いたいのかと申しますと、件の「女子高生コンクリート詰め殺人事件」についてです。
ちょっと前にも、この事件をモデルにした映画に関する一連の騒動について書きましたが、正直、以前から、この事件そのものより、映画『コンクリート』でも露見したこの事件の扱われ方、騒がれ方のほうが興味深く有ります。


事件に関しては、自分は少年だろうが、どんな理由だろうが「(原則的に)殺人者はすべて極刑に処すべき」という考え方なので、少年法に関しても、殺人者はいかなる幼年者であれ適用除外にするべきだと思っています。


で、ジャスト・イン・タイムなことに、最近、犯人が再逮捕されたという報道が流れたことで、またまたこの事件が再燃し、以前から言及していた人々以外にも波及し、今や超ホットな話題になってしまった現状を踏まえながら、何故この事件だけが繰り返し語り継がれてしまうのか…。
ネット文化が根付いてから今日に至るまで、訴えている人たちの心理的感情の所存はどこにあるのか。
この辺に関しては、どこかの専門家の人が面白い研究や分析をしてくれるのを待っているわけですが、とりあえず自分で考察してみることにしました。


まず、当該事件は犯罪史上稀にみる凶悪事件でした。しかし、この15年の間だけでも、様々な事件があった。宮崎勤、オウム、池田小、毒カレー…。少年犯罪史的に見ても、神戸の中学生、バスのハイジャック事件、長崎の事件等々、昔には山口二矢や片桐操がいた。(この辺のことはすごく有名な「無限回廊」さんが非常に詳しく面白いです)


だったら、これらになく「コンクリ事件」にあるものは何か。それは集団による組織的な犯行であること。
しかし、それを言うなら、この事件の直後にやはり暴走族によるアベック殺人や、オウム事件があった。もっと前には日本中を震撼させた連合赤軍事件があった。
リンチの内容はどうか。これは、連合赤軍事件を凌ぐものはないだろうし、被害者の数は桁が違う。されに言えば、戦場ではもっとひどいことが起こっているわけです。


では、「コンクリ事件」に言及する人々を世代で見ると、(予測の範疇を超えませんが)団塊ジュニア(1960年代末〓1980年生まれ)が圧倒的に多いと思う。


そこで思い出されるのが、東浩紀氏が以前に「僕たちの世代にとってのリアルは"ご近所物語"と"ガンダム"だけ」みたいなことを言っていて、要するに「市井の身近な話題か、スペースオペラやRPGのような絶対現実にはありえない話だけがリアル」といった自己言及をしていました。(又聞きなんですが)さらにそこでの「共同体=組織の物語に親和性を感じる」と言及しています。
その時は、今のオタクの2大要素を見事についているなあ、と思っただけだったのですが…「コンクリ事件」の異常人気(?)とも言える若い世代の反応と、この言葉が妙に符合したのです。


つまり、「コンクリ事件」というのは、身近なお隣さんで起きた事件で、東京の住宅街の一角に住む悪ガキどもの、どこにでもある溜まり場で、女子高校生が監禁され、リンチされ、殺害された。それは組織的な犯罪で、しかし、その組織=悪ガキ・チンピラ・珍走団はオタクが共同体であることを踏まえながら、縁もつながりもない別の共同体の犯行だった。身を置く共同体を庇護する為にも、別の共同体を糾弾することは、一番やりやすいことだったりする。


つまり、何故、連合赤軍でもオウムでもなく、「コンクリ事件」なのか。
若い世代にとって「赤軍派」や「オウム」は、リアルではない"遠い"現実の出来事でしかなかった…。


犯罪に対する温度差の違いが世代によってあるのは当然で、団塊の人々にとってのリアルは「赤軍派」だった。しかし、彼らの世代は「私の中の連合赤軍」といった風に、自身の中に彼らの物語を共有してしまった人も多かった…


ここで注目したいのは、映画『コンクリート』騒動で見られるように、上映反対派=一部の団塊ジュニアたちは決して、「共有したがらない、隠蔽したがる」点です。「細分化・村宇宙の世代」といった言葉で片付けてしまっていいか、どうか…。


…と、まあここまでの考察しか出来ませんし、所詮、推測の域をでませんが、そういった理由から、他の事件より「コンクリ事件」は「リアル」に映り、注目を浴びるのではないか、と思ったのです。


と言っても、この事件を取り上げている人が全員オタクだと言っているわけではないので、その辺の論の弱さも含め、誰かもっと、専門家や文章得意な人に統計や根拠づけてやってほしいところです。